〈近代デザイン落穂拾い〉
『GAKUTO』の表紙デザイン 1928.1−1938.12/132冊

古書古物を扱う知人の蔵へ訪ねたのは20年程前、 活版印刷の活字や資料を見に行くためで、昭和初期の『GAKUTO』を見たのもその時のこと。
それは、ある地方の素封家の蔵書を大きな蔵から数年がかりで整理したものと教えてくれた。

二つの蔵を経て手元にある『GAKUTO』は中身はさることながら、表紙を見ると印刷が美しく文字は おおらかで自由。

これらの表紙132冊を一同に並べる展示会を企画し、2020年10月に開催しました。

企画 中村愼太郎・二月空
会期 2020年 10月21日−11月1日
会場 ギャラリーヨクト 東京都新宿区四谷 4 -10ユニヴェールビル102

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『GAKUTO』(學鐙)は、1897(明治30)年、丸善によって創刊された日本初のPR誌。
(現在も『學鐙』として季刊で発行され続けています)
11年間分1冊も欠けることなく、入手されたときの美しい状態で、地方の素封家の蔵に眠っていた132冊。
一見して戦前のものとは思えないモダンな表紙、そこには当時、諸外国から輸入されたばかりの最新の文化や美術、 それらを魅力的に紹介する自由な創意とデザイン上の工夫が見られます。
また、関東大震災後の復興期の明るさと印刷技術の革新などもさまざまに読み取れます。

会場では1928年から1938年に発行された132冊の表紙を展示しました。 その他、関連資料の紹介や今回展示する表紙をまとめた小冊子を販売。

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当時の自由でおおらかなデザイン手法が興味深い。 「GAKUTO」のアルファベット書体は実にさまざま。HBプロセスオフセット印刷機(多色写真製版)などの新しい印刷技術の移入によって色鮮やかな表紙が並ぶ。

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丸善で扱う洋書にある挿画の1ページを表紙に使ってデザインされている。 出典は左からグーテンベルグの印刷による『Gutenberg and the Catholicon of 1460』、スタインによる『INNERMOST ASIA volume4』、 エコール・ド・パリの女流画家『Deuxième Album de Marie Laurencin』

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前衛美術の隆興や撮影技術の進歩とともに、舞台芸術や写真などに関する専門書も多く輸入されていた。

展示した132冊すべての表紙を掲載した小冊子カタログ

『GAKUTO』の表紙デザイン
1928.1〜1938.12/132冊

B6版 32ページ
企画/制作 : 中村愼太郎・二月空
2020年10月21日 発行
価格 ¥1,000(税込)

ご希望の方はお問合せよりご連絡ください → gakuto_catalog gakuto_catalog